夜に音もなき訪問者
〈それ〉は突然、部屋の中に現れた。
夜もふけ、これから眠りにつこうとするところだった。
〈それ〉はあまりにも巨大であった。
頭ではなく、脊髄が反応した。
殺される──
とにかく逃げなければならない。
しかしここは部屋の中。
出口に向かうには、〈それ〉を横切る必要がある。
まずは身を隠して……
そんなことを思っているときにはもう遅かった。
〈それ〉は私に、猛烈なスピードで何か気体を吹きかけた。
私がその気体に包まれると、すぐに体が不自由になっていくのを感じた。
あぁ、ここで、死ぬのか……
〈それ〉は動けない私を、紙のような、布のようなもので包み、運び出した。
意識が朦朧とする中、やがて投げ込まれたのは、湖のような場所。
泳ぐ気力などない私は、すでに腕の数本がもげていることに気がついた。
やがて湖は大きな音を立てて下方へと吸い込まれていく。
私は、その激流の中で息を引き取った。
〈それ〉は虫という種族を嫌う。
我々は〈それ〉に見つかってはならない。
ただの虫退治やろこれ。