恐怖という原始的な感情は、暗闇や幽霊といった類から生じるものとは限らない。

「そこにあってはならないもの」──

それを目にしたとき、人の全身は自動的に危険を察知する。そういうふうに、できているらしい。

 

私はスーパーから帰ってきた。

いつもの通り品物をしまうべく、棚を開けた……。そう、いつものこと。

しかし、そこで、時が止まった。

「そこにあってはならないもの」がそこにはあった。

永遠のような一瞬に、鼓動が早まる。

全身の緊張。

息が止まる。

 

そこにあったのは、何の変哲もない、レトルトのキーマカレー

「まさか……」

その視線を、汗ばんだ左手に握られたスーパーの袋に、恐る恐る移していく。

 

なんということか。

その袋の中にも、レトルトのキーマカレーがあるではないか。

 

「かぶった、だと……?」

いやスケールが小さすぎるやろ