「彼女はいるのか」という困難な問いについて

飲み会で、人生の先輩方から聞かれる定番の一つは「彼女はいるのか」だ。

さすがに人生の先輩なだけあって深い問いである。もちろん文字どおりの質問ならセクハラだが、人生の先輩がそんなことをするわけはない。

 

さてこの深い問いを、絡まった糸をほどいていくように取り組んでみよう。

 

1. そもそも「彼女」とは何か?

彼女の定義は、例えば法律で決まっているのだろうか?

少なくとも私は知らない。

つまり極論すれば「何かわからないもの」であり、「何かわからないものは、いるか?」と聞かれても答えようがない。

 

2. そもそも「自分」とは何か?

「彼女がいる」とは、「自分」と「彼女」の関係性が存在する、ということらしい。

だとすれば当然、自分とは何か、ということへの理解が不可欠である。

そしてこれも難しい。

例えばこの私の身体の細胞一つ一つは「自分」と言えるのか。もしそれは「自分の一部」であるというなら、「自分という全体」とは何なのか? 大腸菌は自分なのか?

など。

 

3. そもそも「自分」は「いる」のか?

どう考えたっているだろう、というかもしれないが、その人が幻覚を見ているかもしれないし、実は脳だけ取り出されて映像を見させられているだけかもしれない。なんかそんな思考実験みたいのがあったと思うけど、まぁつまり、そもそも「自分がいる」ということの確かさも危ういのだ。証明ができない。

 

 

つまり「彼女はいるのか」という問いは、「あなたはいるのか」という、存在の根本を問うものにちがいない。そのため、毎度答えに窮するのだ。